title
HOME
小説TOPへ
蝉の恋
帰郷
帰宅
知らせ
願い
病院へ

蝉の恋

病院へ

俺は急いで県立病院に向かっていた。
県立病院は俺の家から最寄の駅、俺が帰ってきた時に使った駅を越えて、さらに向こう側。
だから、俺が走って病院に行っても面会時間に間に合うか分からないのだ。
それに病院に言っても優衣になんて声をかければいいのだろう。
今更ながらこんなことを考えていた。
親父に優衣が入院したことを聞いていてもたってもいられなかった。
いろいろなことを考える冷静さも失って、玄関を駆け出していた。
靴を履く冷静さも無くなっていたが、一瞬踏みとどまって靴を履く。
そして、今は町の商店街を通り過ぎようとしている所だ。
ここからだと、病院までは目と鼻の先。
無我夢中で走ってきた甲斐があって、どうやら面会時間までには間に合いそうだ。
それでも、ぎりぎりなのだけど・・・。
だんだん近づくにつれて、どんどん何を話していいのだろうかと考えてしまう。
どうしよう・・・。
一年ぶりだし、どんなこと話せばいいのだろうか?
それどころか、俺のこと覚えてなかったらどうしよう。
子供の頃からずっと一緒だったからそんなことは無いと思うけど・・・。
でも・・・。
どんどん嫌な方へ思考が巡っていく。
そんなことを考えているうちに病院前の公園に差し掛かろうとしていた。
この公園は県立病院の患者用の気分転換やリハビリの為に作られたと聞いているが
今では一般の人もここで遊ぶことが多い。
これだけ広い公園はこの町にはここにしかないのだ。
だから、犬の散歩やジョギングをしている人たちと俺はすれ違うのだ。
風を切るように、誰よりも早く俺は駆けていた。
ジョギングしている人よりも早く。
途中で追いかけてくる犬すらも俺に追いつけないだろう。
そして、俺は病院の目の前にたどり着くのだ。