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蝉の恋
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蝉の恋

願い

窓から風が吹く・・・。
お父さんが持ってきてくれた風鈴がチリンチリンと鳴る。
その音で朝を迎えることができたなら、私はとても幸せなのだろう。
私は寝る前にいつもそう感じる。
「う〜〜ん。ここからの景色は最高なんだけどね。あまり、長くは居たくないかな。」
私は背伸びをしながら窓の外を見た。
私のいる市立病院の療養目的の庭を挟む向こう側には町が見える。
大きな町ではないけれども、それでも私が住んでいる疎外地よりも大きな町だ。
そう言えば、博樹元気でやってるかな?
離れ離れになってから約1年と半年くらい。
幼い頃からずっと一緒に遊んでいた幼馴染。
一緒にいた頃はお兄ちゃんみたいな存在だったのかな。
私にも本当のお兄ちゃんがいるけど、それとはまた違う感じだった。
幼い頃は私の方がお姉ちゃんやってたけど、いつの間にか越されちゃった。
ずっと頼りない存在だったけど、高校くらいからは私の方が頼りっぱなし。
男の子って一気に大人になるんだね。
私はそう感じた。
そんな思い出んじ浸っていると、また風が吹いた。
チリンチリン・・・
ミンミンミンミン・・・
風鈴の音に同調するかのように蝉が合唱を始める。
何もすることがない私はいつも観覧席で蝉の大舞台を聞いている。
私も外で聞きたいな・・・。
私のささやかな願い。
だけど、それは叶う事は無かった。
今の私は絶対安静状態なのだ。
元気はあるのだが、体の方が衰弱してしまって動けない状態にあったのだ。
子供の頃はちゃん動けたのにな・・・。
病院に入りたての頃はとても重い病気にでもかかったのかと思ったのだ。
つい、2、3日前はちゃんと動けたのにいきなり動けなくなって
倒れてしまったからだ。
でも、ずっとここに居るうちにそれは違うのだと思うようになったのだ。
薬の量も点滴も毎日あるわけではない。
定期健診も週に1日か2日だろう。
重い病気なら毎日やってもおかしくないと思っていたからだ。
だから、少し安心していた。
「ミンミンミン〜♪」
私も観客席から一緒に歌う。
夏の風に吹かれながら、早く退院したいと願いながらながら・・・。