ポラ編〜堕ちた翼〜
第一話 白き部屋
あれから、私はどうなったのだろう?
分からない・・・。
父の墓石に横たわり、私はそのまま気絶してしまった・・・。
死んでしまったのだろうか?
あれだけの雨に打たれ、体力を失ってしまえばそれも考えられないことじゃない。
あっけないものだ・・・。
生き物が死ぬことなんて・・・。
・・・目の前に光が見える。
その先にはお父さんが笑っているような気がした。
「こっちへおいで」と手招きしているよう・・・。
私は行くべきなのだろうか?
唯一の肉親である父を失った私には何も残されてない。
だから、死なんて怖くない・・・。怖くないけど・・・。
いや、本当は怖いのだろう。
ただ、私は強がってるだけ。
死が怖いというよりも・・・みんなに忘れられることが怖い。
怖くて・・・怖くて・・・身が弾けそうだ。
そして、何よりも死んでしまった父を忘れるのが怖い・・・。
私が死んでしまったら、記憶も何も残らないのだから・・・。
それが、死んでいくものの定め。
どこへ行くか分からないけど・・・。
そこにはもう父はいないのだろう。
だから、せめて私が生きて父を忘れないようにしないと・・・。
私は目を開けて・・・死の誘いを断るのだ・・・。
一閃の光が目に入る。
あれ・・・?
そこは私が気を失う前にいた場所ではなく、見覚えのない真っ白な部屋。
私は仰向けになって、天井のライトを見つめていた。
ここはどこ?
自問自答をしても分かるはずもなく。
私は回りを見渡すだけであった。
「153の様子に変わったとこはないか?」
「はい、今現在の様態は安定してます。」
部屋の外から微かに声が聞こえた。
ここには人がいるんだ。
そう思うと少し気が楽になったような気がする。
パシューン
ドアが開く機械音が聞こえ、二人の白衣を着た人が入って来た。
「ん。ようやく目覚めたようだな。」
一人の年輩の男が私を見ていう。
「局長。」
もう一人の若い女性が局長と呼ばれた男に目で合図する。
「うむ、そうだな。」
男はそう頷くと部屋の外に出て行ってしまったのだ。
「びっくりしちゃった?知らないところにいるなんて?」
若い女性は男が部屋から出て行くのを確認すると私に優しく話しかけてきたのだ。
「えっ・・・ええ。」
「墓地に倒れてたから、私たちがかい・・・いえ、助けてあげたのよ。
もう少し遅かったら死んでいたかもね・・・。」
死んでいたかもね・・・。笑いながらそれを言うことに私は嫌悪感を抱いた。
表面上では笑っているかもしれないが、これは作り笑い。
相手に取り入るために使う物・・・。
私は直感的にそう感じた。
だから、この女性は信用できない・・・。
「そんな怖い顔しなくてもいいじゃない。
あっそうか。人見知りが激しいんだね。
こんな知らないお姉さんに話しかけられて身構えてるんだね。
私はエイミ。ここの研究員だよ。よろしくね。」
またもや、笑顔を私に向けてくる。
怖い・・・。
この笑顔の裏に何かあるような気がして怖い・・・。
「私はポラ・・・。よろしく・・・。」
よろしくしたくない・・・。
心の中ではそう思うけど、仕方ない。
だから、私は女性に対して返答をしたのだ。
「うん・・・。まだ、体力が完全に回復してないみたいだね。
じゃあ、お姉さんは出て行くからゆっくり休んでね。
何かあったら、そこの呼び出しボタンを押してね。」
ベッドの上の病院にあるようなボタンを指差してエイミは言う。
そして、そのまま部屋を出て行ってしまった。
ここはどこだろう?
エイミは何を企んでいるのだろう?
部屋で一人きりになって考える・・・。
でも、何も答えが出てこなくて・・・。
そのまま、まどろみの中に落ちていったのだ。
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